「武侠」という言葉からどんなイメージが湧くか、
というのはけっこう個人差があるんではないでしょうか。

金庸や古龍といった武侠作家の映像作品で
空飛んだりカメハメ波みたいなんを出したりしてるシーンだったり、
白ヒゲ爺が2人で見つめ合ってると思ったらいきなりどっちかがポックリ逝って、
(実は内功の勝負をしていたのだ・・・!)みたいなシーンだったり。

Falの中の「武侠」イメージをいちばんうまく映像化してくれてるな、と思うのは、
映画《ソード・アイデンティティ》《ジャッジ・アーチャー》の監督であり、
《グランド・マスター》製作時には「武侠のスペシャリスト」として王家衛に召喚されたこの人物。

 

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徐皓峰(シュー・ハオフォン)
武侠作家であり、自ら映像作品のメガホンも取る。

 

彼の作品を初めて見たのは、2012年の大阪アジアン映画祭でした。
そしてそこでどハマり。
大阪アジアン映画祭で見た『刀のアイデンティティ』がどストライクだった。

その後、ちょっとした御縁で個人的にメールのやりとりをさせていただいたり、
翌年の京都ヒストリカ映画祭では2ショットを撮らせていただいたり・・・

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初めて彼の作品を見た日からずっと言い続けているのですが、
徐浩峰監督の描く武侠の世界が、私の脳内の武侠イメージとすっげー近いんですよ。

そんな彼がなんと、ドラマの世界にもやってきたというから見逃すわけにいきません。
2014年の末から2015年初にかけて放送されたこちらのドラマ。

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《鏢門》

「鏢局」とは、ざっくりいうと用心棒つき運送屋といったところでしょうか。
武侠小説にも何かと出てくる存在。《笑傲江湖》の林平之も鏢局のぼっちゃんですよね。
清末〜民国初期、激動の時代を「鏢師」として生き抜いた主人公と、
中国の歴史の中で大きな役割を担ってきた「鏢局」という組織そのものの行く末を描いた伝奇。

百度百科では「挽歌」とあります。しっくりくる表現です。

 

主演はウォレス・フォ霍建華、しかもしかも舞台は辮髪!(※今作った日本語)
編劇として徐皓峰が参加しているほか、
監制としてこちらも《グランド・マスター》チームから邹静之が参加。

そんな豪華なメンツを見て放送開始前から気になりつつ、
清末〜民国初期という馴染みのない時代が舞台なのでちょっと二の足を踏んでいたのです。

でもこの映像を見たらもうダメでした、こんなの見るしかないじゃないですか・・・

はぁああああああああああ!!(興奮)

開始早々、第2話で出てくるこのアクションシーン。
要所での適度なスローの使い方とかカット割とか、めちゃくちゃFal好み。
いやぁ、美しい、1カット1カットが美しい。
華哥ももちろん美しいし、この画面に出てくる全ての人が美しいよ。
《グランド・マスター》ぽさを感じるけれど、あれほどクドくもなく(失礼)

 

さらに、《グランド・マスター》でチャン・ツィイー(章子怡)演じるルオメイ(宮若梅)の父、
パオセン(宮宝森)を演じたこの方、ワン・チンシャン(王慶祥)も出演。

もうねもうね、そこに立っているだけで圧倒される存在感・・・!

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山賊のおやぶんを演じるのは倪大紅。
この二大巨塔の2ショット、この画だけでゴハン3杯くらいおかわりできるで!!

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ヒロインを演じる賈青もキュートで魅力的でしたし。

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脇を彩る役者さんたちも、失礼ながら華々しい実績はない人ばかりだけど、
それぞれ皆味わい深くてとってもとっても魅力的。

特にこの人の個性は強烈でした。主人公の宿敵・山猫を演じる党昊。

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そんな山猫を見守るこの人も素敵すぎます。
中の人、郭暁峰は現在視聴中の《偽装者》でもだいたい同じような役柄を演じていて、
めちゃくちゃ既視感を感じている今日この頃です。

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あ、あと楓ちゃんもカメオ出演的なかんじで出てましたよ、ふふふ。

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《琅琊榜》のヒットの原因として、視聴者に媚びず美の本質に立ち返った、
というようなことがよくあげられていますよね。

私も《琅琊榜》ぐるいの一人として「そうそう、そうだよね」と思ういっぽう、
「ちょっとまってよ、地味だけど、いろんな面で『映画並』にクオリティの高い作品は
今までもあったよ?」という気持ちもちょっとあったりして。

アクションシーンは1000倍くらいこちらの方が好みだし
(むしろ《琅琊榜》の動作設計はもうちょっと何とかならなかったのかと思ってる)
画面の美しさにしても、方向性は違えど1カット1カットへのこだわりは負けてない。

とりわけ辮髪の霍建華が美しいのなんのって。

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物語も、謀略劇のハラハラドキドキとはまたちがう面白さ。

脚本もしっかりしているので、こちらのドラマ視聴ではお約束の
「え、なんでそこでそうなる?まあいいか」という大人の対応をする必要もないですし。

大結局の霍建華のこの表情をみると、今でもいろいろこみ上げてくるものが。。。
(一瞬、レスリーに見えません?)

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《琅琊榜》のあと、すこし冷静になって2015年に見た作品を振り返っていたら、
改めてこのドラマを反芻したくなったので、いまさらブログ書いてみました。

自信を持っておすすめできる作品ですよ。
私の周りではご覧になった方があまり多くないので、
もしご覧になった方がいらっしゃったら感想聞かせて下さいましー!

そして、こういう隠れた良作をご存知の方がいらっしゃったらどんどん教えていただきたいでござる。

以下、鑑賞時のTwitterでのひとりごとまとめです。
うーん、《琅琊榜》2周目中だけど、ブログ書いてたらこのドラマも見直したくなってきた・・!